今回は恋愛において、「女性が男性よりも優位に立っている」理由を解説します。
動物の繁殖行動を見ていると、オスよりもメスが優位に立っていることが一般的です。
求愛行動はオスからしますし、交尾をする相手を決めるのもメスの方です。
また、オスはメスに選んでもらうために巣を作ったり、獲物は取って与えるなど様々なプレゼントをしたりして、メスの気を引きます。
これは人間の世界も同じで、上記のようなことはよくありますよね。
プロポーズやデートに誘うなどのアプローチも男性からすることが多いですし、相手にプレゼントしたり、貢いだりするのも男性の方が多いです。
「結婚できない男」「結婚しない女」なんて言葉もありますしね。
このように一般的に恋愛・結婚市場では、女性(メス)の方が優位に立っています。
では、なぜ女性(メス)の方が優位に立てるのか?
結論から言うと、「女性よりも男性の方が多く余っている」からなんです。
男性の方が人数が多いため、男性の方が余りやすく、女性は選ぶ立場になり、男性は選ばれる立場になりやすいわけです。
「いやいや、人間の場合、男女の数はほぼ同じだろ?」と思う人もいるかもしれません。
たしかに人口比は男女ともだいたい同じで、それほど大きな差はありません。
また、一夫一妻制の国では結婚は1対1でするものですし、恋愛でも基本的には1対1です。
そうであれば、「男の方が多いわけがない」「なぜ男だけ余るのか?」と不思議に思いますよね?
だけど、じつは「恋愛・結婚」という市場においては、男女の数はほぼ同数どころか、極端に男性側の数が多いのです。
データで見る男女の交際率、未婚率の違い
男性側が多い理由を説明する前に、まずデータでどれくらい男性は恋愛・結婚市場で女性より余っているか確認しましょう。
下記は、18~34歳の未婚者のうち、交際相手がいない人の割合を示したグラフです。
1987年から2015年までの調査ですが、どの調査でも女性より男性の方が10%前後、交際相手のいない人の割合が多くなっています。
※参考データ : 「国立社会保障・人口問題研究所」の『現代日本の結婚と出産:第15回出生動向基本調査(独身者調査ならびに夫婦調査)報告書 第2章』
また下記のグラフは日本の生涯未婚率の割合を示したものです。
昔はあまり男女差がありませんでしたが、いまは男性の方が倍近く結婚をしていない状況です。
※参考データ : 「国立社会保障・人口問題研究所」の『人口統計資料集(2015年) 表6-23 性別生涯未婚率および初婚年齢』
ちなみに男性が余っている傾向は日本に限りません。
下記の表は、世界の国別で15歳以上の人口のうち未婚者の割合を示したデータです。
どの地域や国でも、男性が女性より余っています。
【国別15歳以上の未婚率】
男性 | 女性 | |
インド (2001) |
29.2% | 15.5% |
韓国 (2010) |
35.6% | 25.9% |
トルコ (2011) |
31.2% | 22.7% |
アメリカ (2000) |
30.3% | 24.1% |
ブラジル (2010) |
53.2% | 47.2% |
イギリス (2011) |
38.3% | 31.2% |
フランス (2013) |
42.4% | 35.2% |
エジプト (2006) |
38.1% | 24.2% |
オーストラリア (2011) |
37.8% | 31.1% |
※( )内の数字は調査年次
※※参考データ : 「総務局統計局」の『世界の統計2018(2-7 男女,年齢,配偶関係別15歳以上人口)』
これらのデータを見てもわかるとおり、恋愛・結婚市場で男性は女性よりも多く余っているのです。
男性があぶれてしまう理由
それでは、なぜこのように男性が女性よりも余っているのか、その理由を説明したいと思います。
まず、下記記事で説明した「(男性より女性は)時間的な損失が大きい」ついて、思い出してください。
上記の記事では、子供にかける時間の違いによって、女性は恋人選びに慎重になるという話をしました。
今回はその時間の違いから、男があぶれてしまう原理を説明します。
イラストでわかる男性が余る理由
わかりやすく例を出してみましょう。
ある島に男女が10名ずつ、計20人いるとします。
全員成人で適齢期の男女です。
そして、ある日そのうちの5人同士がカップルになり、体の関係を持ったとします。
すると、フリーの人間は男女ともに5人ずつです。
ところが、男性の場合、性交渉が終われば、すぐに別の女性にアプローチをかけることができます。
すると、5対5だった男女比が、あっという間に、10対5となってしまうわけです。
もちろん性交渉をした女性の方は、少なくとも出産が終わるまでは、他の男性を受け入れることができません。
その後、また3組のカップルができるとします。
すると一時的に7対2になります。
ところが、男性はすぐに恋愛市場に復帰できますので、あっという間に10対2という構図になるわけです。
つまり、一見男女同数に見える場合でも、異性を求めている男女比でみると、圧倒的に男性の方が余っているのです。
そのため、いつまで経っても、女性に相手にされない男性が、存在してしまうわけです。
もちろん、実際の人間社会では、道徳的な面から妊娠後も浮気せず、付き合っていくことが一般的ですので、ここまで極端なことにはなりません。
ただ、何人も浮気相手がいる男性や、妻子ある男性と付き合う女性も結構いますので、この構図がよくお分かりいただけると思います。
動物の世界では……
上記の話は、動物の世界を見ると、さらに顕著です。
動物の場合は、道徳的な面や倫理観などは関係なく、それぞれの種が自分の遺伝子を残すのに最適な戦略を取ります。
そのため、多くの種では恋愛市場においてオスが余っておりメスの方が少数になっています。
ですから多くの種でオスがメスを取り合って争うわけです。
ライオンなどもオス同士が戦い、勝ち残った一匹が複数のメスと関係を持つことができます(この群れを「プライド」と呼びます)。
オットセイやアシカなどもオス同士の争いが激しく、1匹のオスが数十匹のメスとハーレムを作ります。
つまり、オス同士の争いに勝てなかった他のオス数十匹はメスに相手をしてもらえず、一生童貞のまま過ごすのです。
たとえば、ゾウアザラシは1匹のオスが100匹近いメスを抱えると言う、とてつもないハーレムを形成する動物です。
4倍も違いがあって、ちゃんと交尾できるのか不思議ですが、オスの戦いが激しい種だと、体も大きく進化しやすいのです。
逆にメスが余る動物がいる!?
では、「逆にメスがオスよりも余っていて、オスを取り合う動物はいないのか?」と言うと実はいます。
数としては少ないですが、実際にメスの方が余っていてオスを取り合っている動物は存在します。
有名なのが、東南アジアなど熱帯地方に生息する「レンカク(蓮鶴)」という鳥です。
レンカクは恋愛市場において、メスがオスよりも余っており、メスがオスに対して求愛行動をとります。
「なぜレンカクはメスの方が余っているのか?」と言うと、じつは「育児をメインで行うのがオス」だからです。
レンカクの場合、卵を産むのはもちろんメスなのですが、その産んだ卵を温めるのはオスの役目なんです。
メスは基本的に卵を温めはせず、オスが卵は孵るまで温め続けます。
そのため、子供を作るためのコストはメスよりもオスの方が大きく、結果的にメスの方が余るようになっているのです。
ですのでメス同士がオスを争うことがあり、メスがオスに対して求愛行動をとるのです。
最近は、人間の世界でもイクメンの人が増えていますが、さらに増えて完全に男性が育児をするようになると、将来は女性が男性に対して求愛行動をとるような世界になるかもしれませんね 。
※人間の場合、男性は授乳などができないので完全に育児を肩代わりすることはできず、実際には難しそうですが……。
まとめ
恋愛では、「なぜ男側が求愛するのか?」「なぜ女側が優位に立てるのか?」、よくおわかりいただけたと思います。
改めてまとめると、女性が優位に立てるのは、「恋愛市場において男性の数が余っている」からです。
そして男性の数が余っているのは、「女性の方が出産・育児の時間などでコストが多くかかっているから」でした。
ちなみに、「今の日本は昔に比べ、男性の育児参加が増えたのに、恋愛ではいまだに女性優位ですし、女性が男性を選ぶ立場のままじゃない?」と思う方もいると思います。
男性の育児参加が増えれば、女性の出産・育児のコストも下がるので、女性の優位度が下がってもおかしくないと思いますよね?
しかし、これにはまた別の要因があり、そのため女性優位の状態が変わらないのです。
それについては、また改めて別の記事で解説したいと思います。